講評会を終えて、総評をアップしました。
また、課題を選択していたが「講評会に出席しなかった方」は
単位が発生しないので、他の実技 2課題を選んで受講ください。
2018年 10月23日(火)12:00 更新。
アート作品を見るときに「どのような文脈で作られているか」を意識することは とても大切です。
作品を生み出す者にとっても、自分自身が求めているもの、こだわるもの、こだわってしまうものなど、
「私の文脈」を意識することで、新しい表現に挑戦しやすくなると村田は考えます。
「そんな面倒なことはいろいろ考えず、私は感覚の赴くままに描くだけだ〜っ!」という意見もあるでしょうが、それだけでは向上しにくいものです。
今回の課題では、自分で「私の文脈」を 探り、それを基に作品を作りましょう。
いつも描いている平面作品だけに限らない、自分にとって新鮮で意欲的な表現を歓迎します。
「いまの自分をつくりあげているもの」を カード一枚にひとつずつ言葉で
記入していきましょう。
あまり深刻に考えず、「頭の中にある全てのことを書き出す」つもりで
書いていきます。
格好いいことや 尊大なことでなくても かまいません。
他人から見たら何の価値も無いようなことほど、
表現者にとっては重要であったりします。
(各自、厚紙などを裁断して、文/絵カードを自分で作成、追加補充してください。素材や色などは自由ですが、必ずノートではなくカード形式で一枚にひとつずつ書くようにしてください。
これは、本課題が薦める思考方法 「知的生産の技術」梅禎忠夫 著(岩波新書 1969)に基づいています。)
マジックなどでしっかり大きく書いていきましょう。
まずは、「文 / 絵 カード」を手で描いて作成してもらいますが、思いつかなくなったり、描くのが難しいという状況の場合、プリントアウトした写真や文字をカード大に切り抜いて「文 / 絵 カード」として作成することもできます。
この場合も、カードの表裏に 文字、もしくは絵を描き、カードとして完成させましょう。
ふだんから、スマホに何かしらのメモや気になるものの写真を集めている方は多いのではないでしょうか。
スマホの中のままだと、カードとして物理的に掴めないので、思考や発想をしにくいと思いますので、この課題では前述のとおりプリントアウトを薦めます。
印刷自体は、洋画棟二階の「情報資料室」で可能です。
山口助手か、村田に伝えれば、課題として A4 三枚まで印刷できます。A4 一枚に写真を 四つ配置できるので、十二枚のカードができます。
もちろん、他の印刷環境で刷り出して頂いてもかまいません。刷り出しのためのパソコン作業は案内します。
そこから作品を作ります。
テーマはうまく言葉にできなくても大丈夫です。
言葉にできないからこそ 作品を作るとも言えるのです。
採用したカードをラミネートでつなぎ合わせておきます。
これは講評会のときなどに、作品と共に提示してください。
また、将来のために 不採用とした 文カードも 取っておきましょう。
自分で自分のことを考えた時間は 取り戻すことのできない財産です。
「映像」
「インスタレーション」
「パフォーマンス」
「テキスト」
「ソーシャルエンゲージドアート」など、
挑戦する作品の制作方法のアドバイスも行います。
個々のアトリエだけではなく、
アトリエ Z401 のミーティングスペースも使います。
文カードの組み合わせが思いつかない場合、「くじ引き」のようにカードを引いて繋げるのも良いでしょう。
偶然に異質なものが組み合わされるときに、見えてくるものを受け入れる。
これは、「カットアップ」と呼ばれる方法です。
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art space アートワード 「カットアップ」
この課題は「自分探し」の要素もありますが、自分の人生史やルーツだけを追うことを目的とはしていません。
「自分とはこうだ!」という定義づけで、不自由になるのではなく、バラバラに発生している様々な自分の好きなもの、嫌いなもの、気になるものという「文 / 絵カード」をつなぎ合わせ、いま現在確認できる自分の文脈を作り出し、自由を獲得することが目的です。
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二週目の段階では、まだ村田が廻ることができていないアトリエもありますが、「文 / 絵カード」を見せてもらったなかで村田が反応しているのは、無意識に生まれてしまった言葉だと思います。それは何気なくアトリエの窓際に積み重ねたコーラの紙コップに似ています。
自分では意識していないけれども、どうしてここに積んでいるのか、私の文脈は常に生まれています。
今回の「作品」は、文脈から凝縮していきましょう。
そのときに、「絵」ではない、ふさわしい表現方法もあります。
写真は 2017年の2年生のアトリエにて 村田撮影す
二枚以上の文/絵カードを繋げたものと、
作品を展示してください。
会場は Z棟一階 ゼミ室 を基本としますが、運べない作品などの理由で、アトリエなど講評が行えるところを設定することも可能です。
プロセス、作品仕上がりなど 総合的に講評、採点します。
油絵だけではなく、上から吊り下げる立体物や、ビニールシートにマジックでドローイングを行ったもの、文字の解体に死生観を内包したもの、絵本のための実験的な取り組み、インスタレーションの問題を引き出させたもの。
様々な作品を、自分の 「文 / 絵カード」から引き出して頂きました。
作品の完成度よりも、文 / 絵カードを経ての制作プロセスを重要視すると話しました。
この課題を通して、言葉を扱うことや自分が語るべきことを意識していくことが目的です。
今回、圧倒的な完成度を見せてくれた作品は少なかったですが、
「私の文脈」 は見えてきたと思います。
そして「言葉を作品化することの難しさ」 が明らかになったと思います。言葉にするということは、モヤモヤしているものを明らかに掴めるようにすることであり、それは同時に「この言葉では足りない、多すぎる」というズレを起こさせますが、自分を確かめるに、人は言葉を重ねるでしょう。それは必ずしも今回の課題のようにカードのようなわかりやすいかたちをしているとは限りませんが。
文章や説明ではなく、作品という言葉でそれを具体化していきましょう。(作品に文字を書こうという意味ではありません・・。)
講評会は、ひとつのピリオドです。
言葉にするピリオドです。
16名の作品の講評会となりました。
作品について語ることができるのは大学という場の魅力です。
今期は年末に「選抜展」などが開催されます。
また、話を聞かせてください。
(左、写真はイメージです。村田参加の展覧会の一場面より)